うみねこにっき

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ブルーオーシャンを探して

【書評】「戦争と革命の世界史」で世界情勢への知識を深める



日本史よりも世界史の方が好きなのは、それぞれの国の歴史からその国の性格が感じ取られて興味深いからだと思う。
とは言え、大学受験をも終えてしまうと世界史に触れる機会などそうそうなく……特段歴史オタクでもないわたしの頭からは世界史の知識が丸っとすっぽ抜けてしまったというもの。

世界史の知識なんてなくても日常生活に支障を来たすわけでもないですしおすし―――なーんて思っていた時期がわたしにもありました。

でも、実際のところは世界史の知識って世界情勢の理解を深めるのに一役も二役も買ってくれるのですね。 最近ではオバマ大統領の広島訪問や阿部首相の真珠湾訪問がニュースになったけれど、世界史の知識が0であればあれらの世界的ニュースもちんぷんかんぷんなわけで。歴史ってちゃんと現在につながっているのです。

それを実感させてくれたのがこちらの一冊。

戦争と革命の世界史

この本を読むまでは、テロは起こす側が絶対悪!イスラム国ってなぜあんなに残虐非道なことができるのか、恐ろしい!と決めつけてかかっていて。いや、恐ろしいことには変わりないのだけど、この本を読む前と読了後ではテロやイスラム国に対する印象がガラッと変わってしまった。

遡り学習法がものすごーくわかりやすい

今、我々の目の前で展開している「21世紀」の国際情勢をほんとうに理解しようと思ったならば、その前段階「20世紀」の歴史理解が必須です。
 しかし、その「20世紀」の歴史理解をするためにはどうしても「19世紀」の歴史理解が、その「19世紀」の歴史理解をするためには……とどこまでも遡らねばならず、厳密には、原始社会まで延々と遡らなければ「21世紀」の理解はできません。
 したがって、高校などで世界史を学ぶとき、すべての教科書が原始から始まって、古い時代から古代、中世、近世と順々に現代に向かって説明がなされます。

 本書では逆転の発想で、時間を遡るようにして解説することを試みています。

 最初に現代情勢を学び、それに紐付けながらひとつ前の時代、ひとつ前の時代と遡っていくのですから、高校世界史の教科書に載っていたバラバラの出来事が、すべて「現代」に繋がっていることを痛感できるようになるでしょう。

この遡り学習法がものすごーくわかりやすい。時代の流れのままに歴史を紐解くのも良いけれど、それをあえて逆から遡ることで見えなかったものが見えてくる。何事も結論から述べた方がわかりやすいってのは本当だったのね。 こんなひどい事件が起こりましたよー、でもその背景にはこんな歴史があったんですよーといった形で、わかりにくいはずの歴史がポンポン頭に入ってきた。

著者の語り口調がまた軽快で良い

アメリカという国は、戦争を仕掛けるためなら自国民の命も平気で投げ出しますし、ましてや事件を捏造することなどに何のためらいもないお国柄です。

などと、皮肉たっぷりの語り口調が読者を飽きさせない。うーむ、学生時代に出会いたかった。
ここで、アメリカやイギリスなどの他国を皮肉るだけであれば興冷めだけれど、ちゃんと自国の日本のことを皮肉るのも忘れないところが好印象。歴史を語る上では平等の精神がなければね。


世界史の知識が深まれば趣味の海外旅行も捗るだろうので、こういった本もちょいちょい読んでいきたい所存。新聞で著者の神野正史を見かけて、そのスキンヘッドっぷりに驚いたのは内緒です。しかもサングラス……すごく、キャラが濃ゆい……。